「番茶」がどんなお茶か、すぐにイメージできますか?
お茶にはたくさんの種類がありますが、番茶という名前はなかなか聞きません。
ここでは番茶というお茶について、分かりやすく解説します。
美味しい淹れ方や種類、保存方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね!
番茶とは
番茶は緑茶の一種で、規格外・低級品のお茶の総称です。
こう聞くと「美味しくないお茶なの?」と思う方もいますよね。
でも番茶の由来にはさまざまな説があり、茶葉の摘採期や品質、地域などによって、さまざまな意味の番茶があります。
◯「ばん傘」や「おばんざい」も番傘・お番菜と書きます。「番」という文字には「ふだん使い」という意味もあるそうです。普段使いのお茶という意味。
◯一番茶や二番茶の間に摘んだものを「番茶」と呼ぶ。
◯番茶は一般的に茶摘み時期が遅い硬い葉や古い葉をつかって作られるお茶です。
緑茶の茶葉は、収穫時期が早いものから品質が高く、遅くなるほど品質が下がります。
一番早く収穫するお茶を一番茶、一番茶を摘み取ってから約50日後に二番茶、三番茶と続きます。
三番茶、四番茶といった遅く摘み取るお茶という意味の「晩茶」が変化しました。
お茶の産地に限らず、根の強いお茶の木は有用な境木として多くの地域で植えられていたそうです。また、祭礼の際に植樹する風習がある地域もあり、そういった茶葉を利用して自家製で作られていたお茶が「番茶」でした。
江戸時代中期までは、一般に出回るお茶のほとんどは現在でいうところの「番茶」だったといわれています。さらに明治時代、製法や品質に対する磁術が向上し、煎茶が高級品として輸出が奨励されるようになると、低級品の煎茶が国内消費に回され番茶として普及したとの推測もあります。
このため、各地に古くから伝わる伝統的な番茶には様々な製法で作られたものがあり、茶の木から葉を摘み取って自然乾燥させただけの薬草茶の様なものから中国茶のような発酵茶まで存在します。
お茶は香りが高い新茶ほど重宝されます。番茶はそういう意味では鮮度の落ちたお茶ですが、地域色が強く、日本人が長く親しんできたお茶なので、味わい深いです。
家庭用に作られているものも多く、自然栽培でほとんど手作業で製造されています。
特徴のある珍しいお茶もあり、なかなか手に入らない幻のお茶でもあります。
番茶の種類
番茶は実にさまざまで、これと定義しにくいお茶です。
各地域ごとに生活に合っているものや、手に入りやすいもの、製造しやすいものが多いので、種類も豊富です。
ここでは代表的な産地と番茶を紹介します。
京番茶
京番茶は煎茶や玉露を摘採した後に残る芽葉を焙煎して作る焙煎香の強いお茶です。京番茶と同じように焙煎して作られる炒り番茶には、九州地方の釜炒り番茶や瓶炒りのはんず茶、茶葉を直接火で炙る焼き茶などもあります。
吉野の日干番茶
奈良県吉野地方で古くから伝わっている番茶で、「天日干し番茶」とも呼ばれています。
摘み取った茶葉をよく蒸し、その後1日以上天日でしっかりと乾燥させ、その後焙じて作ります。
機械で揉みながら乾燥させるものに比べると香りが高く、渋味が少なくあっさりとした味わいと葉の形がそのまま残っていることが特徴です。
陰干し番茶
福井県勝山市に製法が伝わっている番茶。秋に茶の枝を鎌で刈り、縄ですだれのように編んで軒先に吊るしておくだけの、陰干し番茶です。
飲む前に鍋で軽く炒って煮出すので、薬草と同じ方法で利用されています。
美作番茶
岡山県で作られる美作番茶はお茶の木を枝ごと刈り、煮てからむしろの上で煮汁をかけながら陰干しをするお茶です。
美作番茶と同じように日干しして作られる陰干し番茶には愛知県の足助寒茶などもあります。
阿波番茶
徳島県で作られる阿波番茶は茶葉を乳酸発酵させて作る番茶で、わずかな発酵の香りが特徴です。阿波番茶と同じようにお茶の酵素ではなく乳酸菌や麹菌などの微生物から発酵させて作る後発酵茶には高知県の碁石茶や愛媛県の石鎚黒茶などがあります。
番茶の種類についてはこちらの記事で解説しています。
番茶の美味しい入れ方
番茶は硬くなった大きな葉で作るお茶です。
煎茶に比べてあっさりした味や独特の香りを楽しむには、熱湯でさっと入れるといいでしょう。
煎茶のように時間をかけると番茶に含まれるカテキンが出過ぎて、かなり渋いお茶になってしまいます。
ここでは番茶の美味しい淹れ方とポイントを紹介します。
急須で入れる方法
番茶を淹れるには、大きな急須が向いています。
茶葉自体が大きいですし、さっと入れるとあっさりと何杯も飲めるので使うお湯も多めです。
たくさん飲みたいときは、マグカップを使って飲んでもいいですね。
1.大きめの急須に茶葉を淹れる
茶葉は1人3g〜5gを目安に入れます。
ただ番茶はさまざまな種類があるので、それぞれに合った量があるはずです。
そこから自分好みの量を見つけてください。
2.ポットからお湯を入れる
番茶は90℃以上の熱湯で淹れると、飲みやすいあっさりとしたお茶に仕上がります。
ポットから熱湯(約100℃)を直接、急須に注げるので楽ですよね。
お湯の量は1人あたり約100cc。ミネラルウォーターの場合は、軟水がおすすめです。
急須をゆすらずに静かに待ちましょう。
3.茶碗に注ぐ
抽出時間は30秒でいいというものから3〜5分というものまであります。
最初は短めにして、味を見ながら調整していくといいでしょう。
入れるときのポイント
味と色を均等にするため、少しずつ順に茶碗に注ぎます。
まわしつぎをして、美味しい最後の一滴まで注ぎきることが大事です。
急須にお茶を残さないことで、2煎目も渋みが残ることなく飲むことができます。
やかんから入れる方法
やかんにお湯1ℓ沸騰させます。水道水の場合はカルキを抜くために、沸騰した状態で5分ほど置くと、お茶の味が引き立ちます。
茶葉5g~10g入れ、3分程度煮出した後、数分蒸らします。
作り置きする方法
番茶は長時間置いても渋くなりにくいお茶なので、作り置きに向いています。
やかんに沸騰したお湯を沸かし、茶葉を入れて煮出します。
そのまま保温性のあるポットや水筒に入れておけば、好きなときに番茶が飲めますよね。
ただ茶葉で淹れたお茶は悪くなりやすいので、早めに飲むのがおすすめです。
夏はティーバッグを使って水出しにすると便利です。
番茶の保存方法
番茶もほかのお茶と同じく、湿気と匂い、温度に弱いです。
茶筒などで保管するのがいいでしょう。
茶葉は開封した場合、夏場は2週間、それ以外でも1ヶ月以内に使い切るのが理想です。
保存する場合は、香りや味に影響がでないよう密封容器に入れ、冷蔵(冷凍)保管をすると鮮度が落ちにくくなります。
冬は室内が温かいので、冷蔵庫から取り出した際の結露に注意しましょう。
まとめ
番茶は個性のあるお茶です。
一口に番茶と言っても、製法も味の香りもそれぞれ。
でもさっぱりとした後味で飲みやすく、日常使いに最適なお茶であることは、全ての番茶に共通しています。
カフェインが少ないので小さな子どもも飲めて、家族で楽しむことができます。
夜寝る前などのホッとする時間に飲むのもいいですね。
地域ごとに違う番茶の飲み比べをするのも楽しそうです。
ぜひ、番茶の魅力を味わってみてください!
水出し番茶の淹れ方や、番茶の効能についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
コメント