日本のお茶の中でも「番茶」についてはご存知ですか。普段からお茶を飲む機会が多いがどれが番茶にあたるか特徴が知りたい、他のお茶との違いをきちんと理解したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また番茶は番茶でもさまざまな種類があり、どの番茶にどのような特徴があるかという疑問を持つ方も中にはいらっしゃることでしょう。この記事では番茶について、製法や味わい、栄養などを他の日本茶とも比べながら詳しく解説していきます。その上で日本の各地に伝わる様々な番茶についても、特徴をみていきましょう。
どの番茶も地域の気候や採れる茶葉に合った製法が取られており、個性豊かな味わいもそれらがもとになっているようです。ただどの番茶であってもカフェインが少なく、子どもから年配の方まで幅広い年代の方が楽しめるのが嬉しい点でしょう。独特の奥深さと魅力がある番茶の世界に、興味がある方はぜひ触れてみてくださいね。
番茶とは
最もよく知られている番茶は緑茶の一種で、収穫時期が遅く生長した葉や一般的な煎茶の選別の際に出てきた規格外の茶葉を使って作られます。市場では煎茶に比べて低級品のものとして扱われがちですが、渋みや苦味が少なく飲みやすいのが特徴です。そのため番茶は食事やリラックスタイムに飲むのにも向いています。
また番茶の「番」という字には普段使いの、という意味があるため「普段使いのお茶」として昔からさまざまな地域で親しまれているでしょう。そのため番茶は作られる地域によって特色が現れることがしばしばです。
おすすめの番茶についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
番茶とほうじ茶の違い
香ばしい風味で人気を集めているほうじ茶ですが、これは一旦製茶された茶葉を仕上げに高温で焙煎することによって作られるお茶です。ほうじ茶には淹れた際の水色が赤茶色で、味わいはすっきりとしているという特徴があります。また、ほうじ茶独特の甘香ばしい香りは、焙煎によってピラジンという香り成分が含まれることにより生まれたものです。
一般的には番茶を焙煎してほうじ茶を作ることが多いですが、煎茶を焙煎することもあるでしょう。この場合「ほうじ番茶」「ほうじ煎茶」といって、両者を区別することもあるようです。つまり番茶とほうじ茶の最大の違いは、製茶する中に焙煎する過程があるかどうかといえるでしょう。
番茶とほうじ茶の違いについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
番茶と煎茶の違い
煎茶とは4月下旬以降の新芽や6月頃に採れる茶葉が使われたもので、日本で飲まれる緑茶のほとんどが煎茶であるといわれています。
ご存知のとおり水色は緑色、甘みや渋みなどのバランスが取れているお茶です。そのため日本国内の地域を問わず親しまれており、スーパーやコンビニなどで目にする方も多いのではないでしょうか。
先にも説明したように番茶は煎茶の選別で残ったもののため、味わいや栄養成分などに違いが見られます。具体的にはカフェインやテアニンは煎茶の方が多く含まれています。
これらの違いは、茶葉の収穫時期や収穫した茶葉の大きさなどによって生まれるものです。しかし煎茶も番茶も蒸す、揉む、乾かすといった製造工程はほとんど変わりません。
煎茶のメリットとデメリットについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
番茶の呼び方
ここまで番茶の特徴や他のお茶との違いについてみてきましたが、番茶はどの時期に収穫された茶葉を使うのでしょうか。ここでは収穫時期による番茶の呼び方、特徴について触れていきましょう。
一番茶
一番茶とはその年の初物として収穫された茶葉を使ったお茶のことで、一年で最も品質の良いお茶とされています。具体的には4月下旬から5月初旬ごろに収穫されたものを示し、「新茶」と呼ばれて市場に出回っているでしょう。旨味成分であるテアニンが二番茶に比べて多く、苦味が少なくさわやかな味わいが特徴です。そんな一番茶は縁起が良いとされ、贈り物に使ってもきっと喜ばれるでしょう。
二番茶
二番茶とは一番茶の収穫後、6月前半あたりに収穫される茶葉を使って製茶されるお茶のことです。煎茶の特徴が最もよく現れたお茶で、苦味や渋みもよく感じられる味わいになっています。これは一番茶より日照時間が長い5月や6月に育ったため、カフェインやカテキンが多く含まれることにより生まれる味わいです。一番茶ほどの甘みや旨味はないものの市販の「緑茶」の原料になることも多く、馴染みが深い方も多いのではないでしょうか。
三番茶
7月下旬から8月上旬に収穫された茶葉で製茶されるのが、三番茶です。二番茶を摘み取ってから1ヶ月後の収穫になるため葉の栄養は少なく、味や香りも一番茶や二番茶よりあっさりしたものになります。
つまり番茶と呼ばれるお茶は、7月下旬以降に採られた茶葉が原料になると考えて間違いではないでしょう。そのためほうじ茶の原料になったり、何らかの加工がされたりして市場に出回ることが多いようです。
秋冬番茶
秋冬番茶とは、三番茶の茶葉を収穫せず10月あたりまで生長させてから製茶して作ったお茶です。ポリサッカライドが豊富で、血糖値を下げる効果があることでも知られています。ポリサッカライドの十分な効果を得るためには水出しがおすすめですが、お湯で淹れてももちろん美味しいでしょう。
またカフェインは一般的な煎茶の半分程度になるので、子どもも含め安心して飲める方も多いのではないでしょうか。
地域に伝わる番茶の種類
番茶と一口に言っても、作られる地域によって特徴は千差万別です。しかしどの番茶も地域で昔から親しまれていたもので、それぞれの気候風土によって生まれる魅力が詰まっています。ここでは日本各地に伝わる有名な番茶についてご紹介しますので、気になった方はぜひ試してみてくださいね。
京番茶
京番茶とはその名のとおり京都に伝わる番茶で、大ぶりの茶葉を揉まずに焙煎するという製法がとられています。そのため淹れる前の茶葉は枯葉のような見た目をしており、素朴な雰囲気があるでしょう。
水色はほうじ茶とよく似ていますが、ほうじ茶とは違った独特のスモーキーさがある香りに魅了される方も多いようです。このスモーキーさを料理の香りづけに活かすケースもあるようで、実際に湯葉やソーセージなどに入っていることもあります。焙煎した茶葉を使うため味はほうじ茶のような甘香ばしさがあるので、食事のお供にはもってこいのお茶ですね。
美作番茶
岡山県の気候が生かされた美作番茶は、懐かしい香りと優しい味わいが特徴です。茶葉を煮てその煮汁をかけた茶葉を炎天下で天日干しする、という作業を繰り返すという製法で生まれた美作番茶の茶葉はあめ色に輝きます。
この珍しい製法は室町時代から伝承されてきたとされ、美作番茶は宮本武蔵も愛飲したと伝えられています。また美作番茶は「日干番茶」という異名を持ち、岡山県の温暖で安定した気候があってのことでしょう。
味わいはあっさりとしていますがコクや甘さが感じられ、熱湯で煮出しても水出しでもその魅力を味わえます。他の番茶同様カフェインが少ないため、リラックスタイムにももってこいの優しいお茶です。
陰干し番茶
福井県の勝山市に伝わる陰干し番茶は、茶葉のついた枝を編んで軒下に干すという製法で知られています。秋までじっくりと生長させた茶葉を軒下に干し、淹れる前に煎るのがポイントです。ちょうど薬草を飲むようなスタイルで楽しむのが、陰干し番茶独特の飲み方とされています。
阿波晩茶
阿波晩茶とは徳島県に伝わる番茶で、蒸した茶葉を桶に入れて乳酸発酵させて作るのが特徴です。そのため優しい甘みと酸味がある味わいになり、香りも独特のものだと言われています。乳酸菌などの栄養成分も豊富で、赤ちゃんから年配の方までどの世代の方が飲んでも嬉しい効果があるとされています。
阿波晩茶の製法は弘法大師が地元の住民たちに教えたものだと言われており、かなり歴史のあるものです。また世界的にも珍しい後発酵茶として知られており、2021年には国の重要文化財に指定されています。また一番茶葉を夏頃まで育てて製茶するため、「晩茶」と表記されることが多いです。
番茶の効果
生長した茶葉を使った番茶には、抗菌、抗酸化作用があることで知られるカテキンやタンニンが豊富に含まれています。そのため血中のコレステロールを減少させたり、免疫に良い影響を与えたりする効果があるでしょう。そのため生活習慣病の予防や改善の一環として、番茶を取り入れるのも良いかもしれませんね。
また番茶は一般的な煎茶に比べてカフェインが少ないため、お子さんや妊婦さんが飲みやすいのも魅力です。もちろんカフェインが苦手な方や、摂りすぎが心配な方、就寝前にお茶を飲みたいという方にも番茶はおすすめのお茶だと言えるでしょう。
番茶のカフェイン量や番茶の効能についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
まとめ
ここまで番茶の種類や他のお茶との違いについて、詳しく解説してきました。最も多くの人になじみのある番茶は生長した茶葉や煎茶を製茶して残った茶葉を使ったお茶のことで、煎茶よりあっさりした味わいが特徴です。
収穫時期でいうと7月下旬以降の茶葉で製茶したものが、番茶といえるでしょう。カテキンやタンニンが多くカフェインが少ないのが番茶の魅力で、子どもも含め老若男女に優しいお茶ともいえます。
ところが日本各地にさまざまな番茶があり、どれも特有の魅力によってそれぞれの地域で親しまれています。今ではその地域に出向いた時に味わうだけではなくネット通販で買うこともできるので、お気に入りの番茶を見つけたらぜひ飲んでみてはいかがでしょうか。
三年番茶の詳細についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
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